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「……」
カタカタカタ
「……」
カタカタカタ
「……」
ミーンミンミンミーン……
キーボード、マウスから出る無機質な軽い音と外から聞こえる生き物達の声。
PCから微かに聞こえるファンの音と体勢を変えることで生じる椅子のきしむ音。
年中快適な湿度、気温に保たれた部屋には毎日といっていいほどこれらの音があった。
……少し前は可愛らしい声もあったんだけどな……。
「ちっ……なんで、このバグ消えないんだよ……」
そんな機器で囲まれた部屋の中に一人、締切間近のゲームのデバックを行っている者がいる。
俺だ。
「ここは後回しだな……」
むしろ俺以外を見つけたら教えてもらいたい。
全力で窓から逃げるから。
ここ二階だけど窓から逃げるから。
「……あれ? ……あぁ、キャラが重なってるのか。 座標指定を右から左……っと」
滝沢恭介(たきざわ きょうすけ)。
今は亡き父がつけてくれた名だ。
父と母は俺が中学の時に事故で他界した。
「……よし」
家のすぐ後ろには俺の親が所有していた山があり、周りには数件の家と田畑がある。
緑が多いと言えば聞こえはいい。
だが、ここは緑が多いのではなく、何もないのだ。
村にはコンビニが一件しかない。
だが、おはようと言えばおはようと気持ちの良い返事が返ってくる村だ。
俺はそんな都会とは時間の流れが違う田舎に住んでいる。
俺には兄弟がいるが、二人とも都会に行ってしまい今この家には俺一人しかいない。
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