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ふと、シャルトの背後から声がした。
「こんなに楽しみにしているんだ。ゼアには約束を果たしてもらわないとだな」
まったく油断していて、いきなり聞こえた声にびっくりして後ろを振り返る。
「クレシアさん!」
シャルトの背後に立っていたのはクレシアだった。
「何で気配消してるんですか!」
「驚かせようと思った」
油断していたとはいえ、背後に人が忍び寄れば気付くはずだ。シャルトが気付かなかったのは、クレシアが意図的に気配を消していたからだった。
「案外子供っぽい一面もあるんですね、クレシアさん…」
意外な一面を発見してアテルアは苦笑した。
自分に対してイメージが変わりそうだったので、クレシアはそれを否定する。
「いつもはやらんぞ。ただ今は機嫌がいいからやってみたくなっただけだ」
「何かいいことあったんですか?」
「ケーキ奢ってもらった」
「……」
イメージは更に子供っぽくなり、アテルアはもう何も言わなかった。
アテルアに代わってシャルトが質問する。
「誰に奢ってもらったんですか?」
「ゼアだ」
クレシアはシャルトの質問に答えるついでに、今日の行動を3人に話した。
「皆と別れた後、俺は騎士団に行った。戦闘訓練をしようと思ってな」
「ずっと訓練を?」
「ああ、朝から少し前まで。
昼を過ぎた頃、ゼアが騎士団にやってきて、それからは共に訓練をした。夕方も近くなった頃に騎士団を出て、ゼアにケーキを奢ってもらったんだ」
「ゼアは今どこに?」
「少し買い物に行くと言っていたな」
クレシアは自分の手を見る。
今日の訓練で、自分はどれだけ強くなっただろうか。
この手で救える人は、少しでも増えただろうか。
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