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そこにもう一人の手が混ざる。
「俺も混ぜろー」
シャルトの肩に腕をまわして、もう片方の手を皆の掌が重なっているところに重ねた。
「ゼア、おかえり」
「ただいま」
シャルトは空いている手で、同じようにゼアの肩に手をまわす。
ゼアはニッと笑った。
「おかえり。何の買い物だったんだ?」
「買い物っていうか、注文。明日の戦いが終わったら取りに行く」
こうやってゼアは生き残るという希望を強める。
生きなければ、それを取りにいく事など絶対に不可能なのだから。
「前払いだったし、かなりの金額だったから絶対取りにいかないとな。大事なモンだし」
「何を注文してきたの?」
「…教えねー」
アテルアの問いにゼアはそっぽを向いた。
「えー教えてよ!」
「じゃあこれだけは教えてやる。俺…の将来に関わるモンだよ!」
俺、の後の奇妙の空白が気になったが、ゼアはそれ以上言うつもりはないらしい。訊いても無駄なようだ。
「ところでゼアは今日は何をしてきたんだ?」
「墓参り。墓場の時に亡くなった元部下のな」
シャルトの問いに答えたゼアの瞳に、悲しみと後悔が滲んだ。
自分だけ生き残り、部下たちは亡くなってしまった。
ゼアは墓参りにかなり時間をかけた。騎士団の墓場に眠っている騎士もいれば、実家の墓に眠っている遺体もいるので、場所はバラバラだ。
それでも、何日もかけないといけない場所はなかったので、昼過ぎまでかけて墓参りをしてきたのだ。
「部下たちのご家族に挨拶もしてきた。それから帝都に戻って、団長と話しをしてきた」
ゼアは騎士団本部のある方向に顔を向ける。
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