十九章 夕空

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そこにもう一人の手が混ざる。 「俺も混ぜろー」 シャルトの肩に腕をまわして、もう片方の手を皆の掌が重なっているところに重ねた。 「ゼア、おかえり」 「ただいま」 シャルトは空いている手で、同じようにゼアの肩に手をまわす。 ゼアはニッと笑った。 「おかえり。何の買い物だったんだ?」 「買い物っていうか、注文。明日の戦いが終わったら取りに行く」 こうやってゼアは生き残るという希望を強める。 生きなければ、それを取りにいく事など絶対に不可能なのだから。 「前払いだったし、かなりの金額だったから絶対取りにいかないとな。大事なモンだし」 「何を注文してきたの?」 「…教えねー」 アテルアの問いにゼアはそっぽを向いた。 「えー教えてよ!」 「じゃあこれだけは教えてやる。俺…の将来に関わるモンだよ!」 俺、の後の奇妙の空白が気になったが、ゼアはそれ以上言うつもりはないらしい。訊いても無駄なようだ。 「ところでゼアは今日は何をしてきたんだ?」 「墓参り。墓場の時に亡くなった元部下のな」 シャルトの問いに答えたゼアの瞳に、悲しみと後悔が滲んだ。 自分だけ生き残り、部下たちは亡くなってしまった。 ゼアは墓参りにかなり時間をかけた。騎士団の墓場に眠っている騎士もいれば、実家の墓に眠っている遺体もいるので、場所はバラバラだ。 それでも、何日もかけないといけない場所はなかったので、昼過ぎまでかけて墓参りをしてきたのだ。 「部下たちのご家族に挨拶もしてきた。それから帝都に戻って、団長と話しをしてきた」 ゼアは騎士団本部のある方向に顔を向ける。
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