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「だぁぁあ! やっべー、遅刻だよ、ちくしょう!」
俺はいつもの通学路を全力で走っていた。
休日という学生のオアシスのような日に全力で学校に向かっていた。
桜響学園――
その学校は、無駄に敷地がある、制服が可愛いことや、有名人輩出、学力も有名大学に行く生徒が多いこと、スポーツもトップレベル……ということで人気の高校だ。
その名の通り、春になれば学校の周りや、通学路にある桜の木が満開に咲く。
それはまるで花びらから音がどこまでも響き渡りそうに感じる。
そんな高校に俺、野中鷹も無事入学をすることができた。
まあ、そんなトップレベルの高校に行けるほどの学力も運動能力もあるわけではない。
勝因はかなり運がよかった。それだけだ。
そんな今の俺の頭の中は、咲き乱れる桜のことでも、有名高校に入ることのできた充実感でもなかった。
俺の頭は今年……いや、三年間一緒に過ごすことになるであろうある 『特別サークル』 のことで一杯になっていた。
「遅い。遅刻。罰金」
碧眼美少女は強いとも言えない口調で罵声を浴びせる。
校舎とは別に建てられている特別校舎。
そこがサークルを立ち上げた人達の部室となる。
『特別学友会』というネームプレートのかかった扉を開いた直後の第一声は俺の純粋な心を打ち砕くようなものだった。
こうやって全力で走ってきた俺に対してあまりにも冷たいのではなかろうか。
ここは俺が反論してもいい時のはずだ。
「だからこうやって全力疾走で来たんじゃねーか。それだけでありがたいと思えよな」
「………」
その美少女の碧眼は俺を見つめたまま、可愛らしい猫の貯金箱を俺の前に差し出す。
彼女はこうと決めたら譲らないという一面を持ったりする。
何を言っても無駄だと感じた俺は、罰金百円を貯金箱に投入した。
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