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「なあ……遅刻したからって罰金はあんまりなんじゃねーか?」
「たった百円」
「百円でも何回もしてたら大きな金額になるだろ?」
「じゃあ何回も遅刻しなければいいこと」
正論に言葉が出てこなくなる。
ちくしょう、こいつには人の血は流れていないのか。
……俺が悪いのだけども。
「よし、部員揃った」
そう言って美少女はホワイトボードを引きずり出す。
俺はいつものように適当な席に座った。
「そりゃ……二人しかいないしな。それで? せっかくの休日に呼び出しして何をするんだ? 休日に学校に来る人なんてスポーツ部員ぐらいだ」
「サークルといってもちゃんとした部活。別に休日に活動あってもおかしくない」
「俺は無理矢理入れられたようなもんだが?」
溜息を吐きだす。
あれは恐喝に近い。
「部員は必要。学園長に無理言って 『仮』 という形でサークルを置いてもらってる。部員を集めるためだったら手段を選ばない」
グッと拳を握る無表情女。
待て。俺が入って以降、全然部員集めをしている記憶がないのだが。
「鷹。今だから言う」
「なんだ」
「最初の一人は誰でもよかった」
彼女はそのまま握り拳からピシっと親指を立てる。
なんでだろう? ものすごくこの子を殴りつけたい。
自分で言うのはおかしいけど、確かに俺は何も特徴という特徴がない。
顔もノーマルだしな。
「私はこの学校によくいる真面目な人には入ってほしくない。真面目な人は私がやることを止めようとするから」
「そりゃそうでしょうな」
だって遅刻したら有無言わせず罰金だもの。
「だから私は同じ新入生一人一人に誰かいないか聞いて回った。そしてとうとう見つけた」
「ほほう? それが俺ってわけか」
選ばれし者。
それはそれで嬉しく感じないこともない。
「そう。なんたってノーマルアバ、成績ノーマル、スポーツもノーマル、おまけに性格もノーマル――」
「貴様は俺をいじめて楽しいか、こらー!」
「つまり私が言いたいのは……」
言葉を打ち切り、彼女はマジックを握り、ホワイトボードに大きく文字を書く。
『ばか』
俺に顔を戻し、また親指を立てる。
「喜べ」
「喜ぶかっ! それで喜ぶバカがどこにいる!?」
「鷹はM」
「なんでバレてんの!?」
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