プロローグ

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たったひとりの僕の妹、なはずなのに。 どのベッドを見ても、横たわっている人の顔はすべて同じ。 莉奈の、顔だった。 ただひとり、中央の台に寝かされている莉奈だけは赤く、黒く焼けた顔をしていた。 それでもかろうじて莉奈だと分かったのは、いつも大事にしていたヘアゴムをつけていたからだ。 両耳の下でくくられた、赤いチューリップの形のゴム。 キラリ、と何かが光った。 白衣の男が持っている、無機質な注射器だった。 「っ!!!!」 助けなくては。 頭ではそう思っても、体が追いつかない。
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