Tragedy

始め。

「な、何で、私、こんな物を……!?」

此処が何処かさえも分からないというのに、自分の手には誰かの血が付いたナイフが握られている。

私は生きてきた中で、人殺しなどやったことがある訳ない。ましてや、自分は倒れていて、私も誰かにはめられたのかもしれない。

大丈夫。まず私は、起きる前の記憶が一切残ってない。

大丈夫。大丈夫!と、何度も心で念じながら、明るくなった部屋を見直す。

辺りは真っ白。さっきの闇と正反対だ。なのに、真っ白の中には目立つ特徴的な色が、広がっていた。

赤で染まった人が、俯せで倒れていたのだ。