日常

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私は多くの人間を殺している。直接的にも間接的にも、大勢殺してきた。 私の両手は真っ赤に染まっている。足元には屍が積み上がり山ができている。 私は信じていないが、もしあの世などというものが存在するのならば、私は間違いなく地獄へ行くだろう。 ・・・・・・そんな私が幸せでいてもいいのだろうか。 失明という障害を差し引いても、メアリーとの日々は満ち足りている。救われて、報われて、私のような人間にも幸せを見せてくれる。 メアリーのためを思うなら、彼女の前から姿を消すべきなのだが・・・。 今の私は幸せに浸りすぎた。昔のような生活に戻ることはできないだろう。 「ムスカさん?」 この優しい声を守るために、私は何ができるだろうか。 ・・・・・・いや、自分でも分かっているはずだ。何ができるか。何をすべきか。 腹をくくれ。思い出せ。自覚しろ。 私は――悪人だ。
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