6人が本棚に入れています
本棚に追加
「口を開けてください。はい、あーん」
「・・・・・・」
なんだこれは。
こんなもの、部下に見られたら見限られること間違いなしだぞ。
「じ、自分で食べる」
「だめです。はい、あーん」
「・・・・・・」
結局明かりをつけてはくれなかったし、なんだこの羞恥心に訴える拷問は。
食べた。
食事の描写は省略させてもらう。結論だけで十分だろう。
「さて、食事が済みましたので・・・・・・おじさん、これが何に見えますか?」
彼女は何を言っている?
「こんな暗いのに、ものが見えるわけないだろう。大人を馬鹿にするのはやめなさい」
「・・・・・・そう、ですか」
なんだろう。彼女の声、なんか泣きそうじゃないか?
・・・・・・嫌な予感がする。
いや、本当は最初から気付いていた。気付いたうえで見ないようにしていた。
「正直に答えてくれ。私の目は・・・・・・」
「・・・わ、私は医者ではないので、詳しいことはよくわかりませんが」
彼女がつばを飲み込む音が聞こた。
「おじさんの目は、多分なにも見えていません」
最初のコメントを投稿しよう!