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「私が、もっとちゃんと助けていたら・・・」
「そんなことはない。君にはなんの責任も――」
「あります!」
彼女の大声に私は驚いた。今までの会話から、彼女は大声や叫び声とは無縁な人だと思っていた。
「君に非はない。全て私の不注意が招いたものだ」
「で、でも」
「おごるなよ、小娘が」
私の声は思ったよりも冷たく、彼女が息をのむのが分かる。
「私の失明が貴様のせいだと? 貴様は神にでもなったつもりか? これは貴様とは関係のないところで負ったものだ」
「そ、そんなつもりじゃ・・・」
「・・・・・・すまない。八つ当たりだったな」
「いいんです。目が見えないっていうのは怖いことですから」
「・・・・・・そうだな」
私は怖いのだろう。
この暗闇の中で一生を――
「だったら」
私の手に温かいものが触れる。私の手を彼女の両手が優しく包み込む。
「私があなたの目になります。だから・・・もう少しだけ、ここにいて・・・」
「・・・・・・よかろう。少しの間、世話にならせてもらう」
彼女の世話になるつもりはなかったが、助けてもらった恩だ、少しだけ言うことを聞いてやろう。そんな風に考えていた。
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