目覚め

5/5
前へ
/13ページ
次へ
「私が、もっとちゃんと助けていたら・・・」 「そんなことはない。君にはなんの責任も――」 「あります!」 彼女の大声に私は驚いた。今までの会話から、彼女は大声や叫び声とは無縁な人だと思っていた。 「君に非はない。全て私の不注意が招いたものだ」 「で、でも」 「おごるなよ、小娘が」 私の声は思ったよりも冷たく、彼女が息をのむのが分かる。 「私の失明が貴様のせいだと? 貴様は神にでもなったつもりか? これは貴様とは関係のないところで負ったものだ」 「そ、そんなつもりじゃ・・・」 「・・・・・・すまない。八つ当たりだったな」 「いいんです。目が見えないっていうのは怖いことですから」 「・・・・・・そうだな」 私は怖いのだろう。 この暗闇の中で一生を―― 「だったら」 私の手に温かいものが触れる。私の手を彼女の両手が優しく包み込む。 「私があなたの目になります。だから・・・もう少しだけ、ここにいて・・・」 「・・・・・・よかろう。少しの間、世話にならせてもらう」 彼女の世話になるつもりはなかったが、助けてもらった恩だ、少しだけ言うことを聞いてやろう。そんな風に考えていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加