1冊目 古泉は暇なようです

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「実は、これを書いて欲しいんです!!」 何を言われるか予想していた古泉に、守野は一冊のノートを差し出してきた。 表紙にはマジックペンでいかにも手書きな書き方で『極秘マンガ!!』と書かれてある。 それを恐る恐る受け取り、表紙を開けてみた。 一ページ目には美形でガタイの良い男と、ひ弱そうな男が描かれており、下辺には……タイトルだろうか。 『尾賀と内海のBL物語』 …………。 自分にこれを描けと? 「い、良いと思いませんか!?」 「えっ……」 ……他人に自分の考えたBLマンガを描かせるのが良いことだと? 古泉はもうなんと言えば良いか分からなかった。 確かにマンガは好きだ。だが、口数がやけに少ないところ以外はいたって普通の中学生。 基本の好みはジャンプ漫画である。 「あぁ……!こう言うコラボって大事だとあたしは思うわけですよ……!!」 守野は目を輝かせながら『私、乙女☆』と言わんばかりのオーラを出しながら語る。 コラボ……コラボとは……男と男のコラボレーションと言う事だろうか。 そもそも、自分は絵を描くことが苦手だ。 描こうとした物が全然違うものになってしまう程に。 以前、美術の授業で自分の似顔絵を描いていたら、隣の席の郷君にこう言われた。 『おぉ、絵ぇ描くの上手いな古泉!!は○れメタルだろそれ!?』←郷君 『…………』←古泉君 人を描いたつもりだったのだが、郷君の目には白銀状の液体に見えたらしい。 ちなみに、上手いと言われたので満足して特に訂正はしなかった。 そう、無意識では○れメタルを描いたんだきっと。 とにかく、似顔絵を描いたらはぐれメ○ルと言われた自分になんてハードルの高い(色んな意味で)物を描かせるつもりなんだこの娘は。 古泉は無表情ながらもそう思っていた。
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