1冊目 古泉は暇なようです

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「さぁ!さぁさぁ!!あの続き、早く見せて下さい!!」 「……ほら……」 玄関先で事を済まそうとしたのだが、扉を開けた一瞬の隙に守野が家の中に忍び込んできてしまった。 追い出したらまた騒ぐだろうと踏んだ古泉は、諦めてそのまま居間まで入れてしまう。 守野はあのノートを見に来ただけらしいので、古泉は大人しくそのノートを彼女に渡した。 「グヘッ……さーて、女体はまだかなァ……?」 「ここまでよ」 オレっちが天井で女体を待っていると、どこからか声が聞こえた。 「だっ、誰だ。オレっちの覗きを邪魔する奴は」 「フフッ……私よ」 「おっ……お前は……ゴキ美ィ!!」 奴はゴキ美。 名前の通り、ゴキブリだ。 「なんでこんなことをするの!?」 「ハッ、人間の女体は最高だ!!あのラインはお前らゴキブリなんか比べ物にならねぇんだよ!!!」 「……いやアンタもゴキブリじゃない。それに……人間は、私らゴキブリを嫌うのよ」 「ぐっ……!!」 その通りだ。 人間とゴキブリは万国共通、敵同士だ。 だが……それはあくまで常識の話だ。 「……常識は……覆せば良い!!!」 「なっ……」 「オレっちは……人間と恋をするんだっ!!!」 次の人へ 「…………」 守野はその話を読み終えたらしく、静かにノートを閉じて机の上に置いた。 無言で。 「僕なりに……発想させた……ただ覗くだけじゃつまんないし……ちょっとしたドラマを加えてみた」 古泉は無言の相手に自分の考えを打ち上げる。 古泉が話し終えてちょっとしてから守野が口を開けた。 「………面白いです」 「…………え」 「あたし、これなんかよく分からないけど好きです!!人間とゴキブリの恋を描く……斬新ですっ!!」 「…………」 人間とゴキブリの恋を描く。 古泉はその事を他人に言われて初めて気付いた。 あ、何書いてるんだ僕、と。
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