2 美味しいお肉が食べたいの

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「蒼麒…」 蒼麒の母である聡子の呼び掛けに、息子はにっこりと微笑んだ。 「ママン…俺ね、隣にいて欲しいのは和輝だけなの。これは、他の誰にも代えられないから」 「蒼麒くん。あなたは『オクヤマ』の後継者なんでしょう?…後継者って事は、次の後継者を残さなくてはいけない立場なのではなくて?」 今まで沈黙していた和輝の母…香津子が口を開き、蒼麒を見据えると、全員の視線が一気にそちらを向いた。 香津子は暗に『和輝には、それが出来ない』ことを示唆しているのだ。 和輝の瞳にも宿る、その力強い光は…まさしくこの女性から引き継いだ物なのだと、蒼麒は改めて実感する。 「確かに…跡目を継ぐというのは、それも含まれる事柄でしょう。…ですが、俺…いえ、私の生涯のパートナーは和輝以外には考えられないのです」 「それで…奥山の家と、会社の方は納得されるのかしら?『オクヤマ』ともあろう古参の大企業が…」 「…和輝を愛したことが『間違い』だと言うのなら…。私はこれ以上『正しくなくていい』のです。『オクヤマ』と『和輝』…どちらかを選べと言われたなら、私は即座に『和輝』を選びます」 「最悪『オクヤマ』から…離れるということ?」 「だからこそ……」 蒼麒は一端言葉を切ると…。 強く握りしめた和輝の手をそっと離すと、立ち竦んだままの彼に向かって、優しく微笑みかけ…。 そして、古宮夫妻の前に歩み寄ると、蒼麒は2人の前に正座し、深々と頭を下げた。 、
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