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蒼麒の言葉を聞きながら…又、その行動を何も出来ずに、ただ呆然と見つめていた和輝は…。
繋がれていた手を離されると、まるで支えを失ったかのように、力なくその場にペタリと座り込んだ。
その足元には、散らばったままの看病グッズ。
すぐ目の前には、自分の両親に頭を下げる蒼麒の姿…。
彼には、色々と言いたいことがあるはずなのに…まるで喉が張り付いてしまったかのように言葉を発することが出来ない。
蒼麒は深く下げていた頭を上げると、真っ直ぐに和輝の両親に視線を向けた。
「『オクヤマ』を出るにしても、残るにしても…。どちらにしても、これから歩んでいく道は、決して平坦な道では有り得ません。だけど、和輝が一緒にいてくれれば…和輝が隣にいてくれさえすれば…。私は、たとえそれが茨の道だとしても、迷わずに歩いて行ける…」
「蒼麒くん…」
「かなりの困難を極める道行きになることは、むろん覚悟の上。もしかしたら…『オクヤマ』という名のために、和輝を危険な目に合わせてしまうかもしれません」
「……………」
「だからこそ……私は命懸けで和輝を守ります!!一生、愛し抜くことを誓います!!ですから…お願いします。和輝を…息子さんを私に下さいっ!!」
再度、深々と頭を下げた蒼麒の姿に……。
今度こそ意識がブラックアウトしそうになった和輝の耳に、香津子の声が静かに…しかし、力強く飛び込んで来た。
「和輝……アンタはどうなの?」
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