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思い出すのも恐ろしい…あの『蒼い悪夢』が和輝を襲ったのは、今からちょうど一週間前のことだった。
その日も午後から休講だった和輝は、一人になれる時間が出来たことをとても嬉しく思っていた。
何処にでも付いて来ようとする蒼麒や、賑やかで楽しい翡翠と一緒にいるのは嫌ではないけれど、たまには一人になりたい時もあるものだ。
本屋に行くのもいいし、新しい服や靴を見に行くのもいいな……自由に好きな買い物をして、ゆっくりお茶して……。
軽い昼食を取りながら、この後の事を考えて、和輝は本当に幸せな気分だった。
カフェテラスから出て歩き始めた和輝のポケットがブルブルと揺れ…マナーモードにしてある携帯電話が着信を知らせてきて…。
ただ今機嫌のとても良い彼は、疑いもなく素直にその電話に応えた。
「はい」
「……和輝……」
「蒼麒?……どうしたの?」
「和輝…お願い…。すぐに来て?…」
「え!?…だって、あなた仕事中でしょ?」
「…でも、今は家なの…」
「三船さんは?いないの!?」
「……ん…」
「蒼麒?具合悪いの?大丈夫!?……わかった。すぐに行くから。待ってて!!」
「……かずきぃ……」
電話を切った和輝は、そのまま奥山家へと急ぎ走り出した。
それが、彼にとっての悪夢の始まりだとは知らないままに…。
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