全力災厄。

10/28
前へ
/221ページ
次へ
ぐいぐい押し退けて、隣に勢いよく腰を下ろす。 このボフッと感がたまらん。 とか思ったのもつかの間、結局サトちゃんにヒョイと抱きかかえられてしまった。 「待て待て、離さんか」 「ここに座れって言っただろ?」 「……答え1択ですか、おらには分がんながったべ」 まったく……もう何なんだよサトちゃん、コクったからってここまでオープンにならないだろ普通。 頑張るってこういうことなのかい? 「あー………落ち着く。ユーちゃんもうずっとこのままでいいぞ。抱き心地最高」 「俺の意見は無視?離せと言っておろう」 「却下だ」 即答とか本当にありがとうございます。 ………まぁ今日くらいは許してやるか、色々あったせいで本当に疲れてるみたいだし。 すでにグッタリ感が半端ない。 仕方ないな、大人しくしとこう。 そうして二人で駄弁ること数時間。 「…………意外だ」 「ん?どしたユーちゃん」 「ちょ、あんま耳元でしゃべんな。イケボに洗脳されるわ」 ………そんなことより。 意外だったのはサトちゃんが耳も尻尾も触ってこなかったことだ。 あの性格上、真っ先にからかってくると思ったのに。 抱く角度変えたり腰に腕回してきたりするあたりは、見事に変態度が増してきているが、尻尾とかにはまだ1度も触れていない。 嬉しい誤算だ。 「いや………この耳とか尻尾、触らないんだなって思って」 「触ってほしいのか?」 「滅相もない」 「…………それ触ったらシャレになんねぇからな」 「ほい?」 シャレにならないってどゆこと? 「いや、こっちの事情だ。気にすんな」 哀愁漂わせながら頭をモフッてくるサトちゃん。 意味よー分からんけど、イケメン最高だから気にしない。 写真撮りたい、そして親衛隊の子たちに配らせてください。 「ユーちゃんは、明日もこのままだったら気を付けろよ。変態とかに捕まったら大変だからな」 やっぱ君はオカンだよ、恋愛感情と母性本能を履き違えているんだよ、きっと。 「でーじょーぶ、明日学校休むつもりだし。それにサトちゃん以外のやつにあんな醜態見せる気ねぇよ」 もうサトちゃんには見られたから仕方ない。 それにもう1年以上一緒に住んでるんだ、今さら隠すこともない。 「…………マジ阿呆かお前は」 「何で阿呆呼ばわりするんすかサトちゃーん」 いきなり腕の力を強め、背中に顔を埋めてくる。 なに、何か俺まずった?
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8293人が本棚に入れています
本棚に追加