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今日だけは許してください亮さん、わたすぅはあなたの出し物に近付きたくない。
「え、あ……じゃあ後からまた来てくださいね!よ、よければでいいんですけどっ」
手を顔の前でブンブン降りながら慌てたように言葉を付け足した亮さん。
本当はもう2度と近寄りたくないんだが、んな気ぃ遣った姿見せられるとどうしようもないほど申し訳なくなる。
「亮さんのそーゆー優しいとこ、俺大好きよん」
「へっ…………あっ、あありがとうございますっ!!」
顔真っ赤な亮さんがめっさ可愛いんだがサトちゃんか師匠辺りで今すぐ襲ってはくれないだろうか切実に。
ボーイ服着た亮さんの焦った照れ顔マジ天使!
よし、それじゃあ逃げるか。
さらばヤンデレ喫茶よ。
「ごめんな亮さん、じゃあ師匠行きましょう」
師匠の腕を掴んで軽く引っ張れば、師匠は少し首を傾げて、それからおもむろに頷いた。
「んー……了解なんよー」
「佐木先輩、失礼しました」
「はい、ではまた!」
すまん多分行かんぞ。
ひとまず喫茶店から離れて、最初に居た階段へ向かった。
右には手を掴んだままの師匠、左には安堵した表情のサトちゃんを伴って廊下を歩く。
あーあ、また行き先考える羽目になった。
別に師匠に用事とかねぇしなぁ。
「ねぇ悠斗、そろそろ俺の腕を離してほしいんよ。それともそんなに離れたくない?」
「後者なんで一生腕握らせてください師――ってぇ!なぜ頭を叩くサトちゃん!」
「ついうっかり」
そんなアクティブなうっかり八兵衛は嫌だ。
あれ、八兵衛って最初は盗賊見習いだったんだっけ。
「人の頭を気分でペシペシ叩くなっての……」
「只でさえ小せぇのに、これじゃ更に縮むもんな」
「おま、オブラートに包んで言ってくれる?大体俺は標準の170だ、お前がデカイんだよ!」
「只でさえお小さくていらっしゃいますのに、これでは更にお縮みになられますもんな」
「それは丁寧になっただけだ」
むしろ腹が立つんだが。
仕返しにアキレス腱を地味に蹴りつけながら師匠の腕を離した。
でも残念なことに草履を履いてるせいで全然痛そうじゃナカタ、てか俺の親指が痛い。
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