全力場転。

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にしてもユーちゃんと委員長ペア遅いな。 入口とは対照的にやけにサッパリとした出口に目をやる。 ここだけ手抜き感というかやり切った感半端ねぇ。 やるなら最後まで頑張れよ、何だその賢者タイム的雰囲気は。 そんなことを考えていると丁度その出口がガラリと開いた。 お、ようやく帰って───…………あ? 「ただいま。渓上君に園宮君、九十九先輩」 「あれ?悠斗はどうしたんだ?」 先にGもとい園宮が俺と同じ疑問を口にした、そうユーちゃんが一緒じゃない。 手に入口で貸してもらった懐中電灯を握って出てきた委員長も、どこか釈然としない表情を浮かべている。 「それが……中ではぐれちゃったみたいで。本当に出口のすぐ手前まで一緒にいたんだけど」 「はぐれた?あの距離で?」 委員長の言葉に俺と園宮が首を傾げた。 なんせ俺達は園宮のせいでこのお化け屋敷でお化けが隠れている場所をかなり熟知しているんだ。 最後の出口付近には確かに係員出入り口が一カ所あったが、驚かされるようなことはなかった。 あんなあと外出るだけのルートではぐれるとは。 アイツ実は天性の方向音痴だったのか? 「もしかして悠斗は引き返したりしたん?最後は左に曲がる道一本しか無かったんよ」 「あー……その可能性はかなり低い気もしますが」 何かを思い出すようにして呟く委員長。 知ってることあんなら言ってほしいんだが。 俺が荒れかけているのを知ってか知らずか、九十九先輩が落ち着かせるように俺の肩を叩いて口を開いた。 「まぁとにかく、あんまり出られないようなら係員が道案内してくれるだろうし気長に待ってみるんよー」 こうして皆でユーちゃんを待つことになった。 ────のだが。 「……なぁ悠斗はいつ出てくるんだよ!」 「んー流石にこれはおかしいんよ」 「長すぎますね」 ………数十分経った、俺達より後に入った客も既に出てきている。 なのに、どうして。 ユーちゃんがいっこうに出てこない。 本格的に何かヤバいんじゃないのか。 事態の異常を感じた俺と委員長で入口付近の受付で事情を話し、中の係員と連絡を取ってもらった。 でもそこで返ってきた言葉は、現状を悪化させただけだった。 「すみませんが、中ではぐれてしまった方や途中棄権を申し出た方はいないそうです」 「どういうことなんよ?」 先輩もこの返答は想像していなかったらしい。 4人全員の表情が険しくなった。
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