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さあどうしよう。
1時間目からサボりたい。
良くないとは思いつつも、足はいつものサボりスポットへ。
向かう途中、空き教室に人がいないか確認するのも忘れない。
いや、ちょっと誰かニャンニャンしてないかな的なね。
そうそう居ないことくらい、分かってるけどさ!
その時、次に覗く空き教室から僅かな声を拾った。
『……んっ…や、ばか!誰か来たらどうすんだよ!』
ま さ か。
『それはそれで、面白いだろ』
俺は完全に覗きモードに切り替え、素早く扉に近付いた。
『う…あっ、やめっ……』
ふおぉぉぉおおおおお!!
ヤベェ久々にキタコレ。
ちょ、男前受けとかなんだよ猛烈に萌えるじゃないか。
うわー誰か知らんが、眼鏡くんいい攻めっぷり。
君には鬼○眼鏡の称号を勝手に授与しとくからな。
どうしよ、めっちゃテンション上がってきた。
そのまま数分、扉にある窓から二人の攻防をニヤニヤしながら覗く。
幸せすぐる、今朝の苛々なんざもうどうでもいい。
「しかしその時、悠斗は背後から近付いてくるもう一人の男に気付かなかった!」
「うおぁ!?」
ふいに肩をおもいっきり掴まれた。
よく事件に遭遇する某子供探偵のセリフと共に。
滅茶苦茶ビビった。
声で誰かはもう分かっていたので、苦笑しながら振り返る。
「全く、お願いだからおどかさないでくれサトちゃん」
「いや~ついな。ほら、ちなみに毒薬もあるぞ?」
そう言って、怪しげな薬を懐から取り出すサトちゃん。
サトちゃん・本名渓上 聡は、この全寮制男子校において俺の同室者で、ヲタ友でもある。
ただしサトちゃんは残念ながら腐ってはいない。
「なに持ってんだおまいは。それが媚薬なら許すけど」
「本当腐敗一色だな、ユーちゃんの脳内は。ただの胃薬だって」
なんだ、つまらん。
…………あれ?
なにか大切なことを忘れている気がする。
「………っ!俺の萌えは!?」
思い出した、俺の萌え!
慌てて扉に向き直り、なかを覗いてみる。
…………おうふ。
そして誰もいなくなった。
「しまったぁああああああ!」
「あ、さっき知らん顔の2人組が逆側の扉から出てったぞ」
「それを早く言え!」
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