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「暖かいですね。」
「……はい。」
4月になった。
桜の花はもう散ってしまった。
今は地面に桜色の絨毯を作ってる。
……もう、春が来たのか。
総司さんと夜桜を見てから、もう2年。
そして、私が幕末に来てから
もうすぐ4年が経とうとしてる。
本当に、
本当に、様々なことがあった。
昔のことに思いを馳せていると、ふわっと優しい風が吹いた。
閉じていた目を開けて、風で舞い上がる薄紅色の花びらを見つめた。
京都にいたときと違って、
江戸に来てから、本当に時の流れがゆっくりに感じる。
時代に、取り残されているような。
だけど同時に、
平和が訪れたような。
そんな不思議な感覚さえする。
「夏樹。」
小さい声で呼ばれて振り返ると、総司さんが手で「おいで」のサインをしていた。
起き上がることができなくなった総司さんは、時々こんな感じで私を呼ぶ。
そして私が近づくと、
ほら、いつものように
きゅっ、と優しく、
少し頼りない腕で抱きしめてくれるのだ。
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