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「夏樹。覚えてますか?
一緒に、夜桜を見に行ったこと。」
あっ、
「私も今、
同じことを想ってました……。」
「ふふ……、」
総司さんは嬉しそうに笑って、
「一緒ですね、なつき。」
そう言ってから、もう一度、弱々しくはあるものの抱きしめてくれた。
あぁ、本当に。
本当に彼は私の心を擽るのが巧い。
「なつき。」
「……?」
「なつき……。」
何度も何度も総司さんの名前を呼ばれて、閉じていた目を開けた。
その時に、気付いてしまった。
「……、」
総司さんの瞳に、涙が浮かんでいたこと。
もしかして、
自分がもうすぐ死んでしまうことを……
「総司さんっ……」
思わず私の視界が霞む。
それを気付かれまいと、総司さんの肩に顔を埋めた。
なんだか最近、泣きっぱなしだ……。
自分の弱さを、改めて痛感してしまったのだ。
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