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今から遡ること、10年――
「かえしてぇ! かえしてよぉ!」
小柄な顔には大きすぎる瓶底メガネを掛けている女の子が、ふたまわり以上も身体の大きな男の子達を追いかけている。
男の子達は、げらげらと笑いながら、ぼろぼろのスケッチブックを持って走り回る。
「おねがぁい、かえしてぇ! すごく、だいじなものなのぉ!」
女の子はスケッチブックを取り返そうと、必死に男の子達を追いかける。しかし、どんなに頑張って走っても、年上の男の子には追いつくことができない。
「ビッグボス! 持ってきましたぜい」
スケッチブックを持っている男の子が、倍近く身体の大きな男の子に、スケッチブックを差し出した。
「ご苦労、下がっていいぞ」
ビッグボスと呼ばれた男の子は、乱暴にスケッチブックを掴み上げた。
「さぁて、凛香よぉ。おまえは、いつもいつもいつも、いっっつも! このスケッチブックと睨めっこしてんなぁ。そんで、なんだかわからん絵を書いたり、字を書いていたり……まぁ、それはいいとしてやろう。でもなぁ、誰とも遊ばない、誰とも話さない、遊びに誘っても断る、いつだって単独行動、いっつもひとりでいるだろう、おまえ」
女の子は下を向いて、何も答えないでいる。
「おまえはよぉ、とにかく超人、超人、超人でよぉ。超人の本ばっかり読んで、超人の映像ばっか見続けて、超人のことを1日中調べててよぉ。どうせ、この汚いスケッチブックにだってよぉ、超人のこととか書いてあるんだろう?」
ビッグボスはおもむろに、スケッチブックの中身を見始めた。
女の子は、がばぁっと顔を上げて、ビッグボスに叫び上げる。
「やめてぇ! やめてよぉ! それ、だいじなのぉ! だれもみちゃだめなのぉ! みないでぇ! みちゃだめぇ!」
女の子はビッグボスに飛びかかろうとするが、周囲にいた男の子達が女の子を腕を掴み、動けなくする。
「うわぁ! なんだこりゃあ! やっぱり超人のことばっかかよ! なになに? ……なんだ? この女の超人は」
女の子は目に涙を溜めながら、ひときわ大きな声で叫んだ。
「みちゃだめぇ! だめったら、だめえええええええぇぇぇぇぇぇッ!!!」
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