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ボサメガネ少女は、憤怒の顔を屍豪鬼に向ける。
「あんたのせいで! この世にたった2着しかないTシャツが、1着に減らされてしまったの! かわいそうに……あんたのしていることは、絶滅危惧動物の殺害! キリングレッドデータアニマルズ! に匹敵するほどの大罪よ! 地球規模の超大罪よ! 今後、転生することを許されず、あんたの存在自体を抹消されてしまうほどの激大罪よおおおぉぉぉ!」
ボサメガネ少女は、Tシャツの下に着ていた、もう1枚のTシャツを指さす。
「いまわたしが着ているピンクのTシャツはね、あんたが惨殺した青のTシャツの色違い、いわば兄妹! ほら、あんたには聞こえないの? この兄Tシャツの無念の声が……」
そう言うと、ボサメガネ少女は、ぼろぼろの青Tシャツを、自分が着ているピンクのTシャツの前に持ってくる。
「ピンT、ごめんよ……お前を置いて逝ってしまう、この兄を……妹不幸な、ダメ兄を……許してくれ……」
「青Tお兄ちゃん! 青兄ぃはダメじゃないよお! だって、ピンTに、すごく優しくしてくれたもん! 大事にしてくれたもん! ピンT、青兄ぃのこと、大好き! 大好きだもん! だから、ダメだなんて言わないで! 逝くなんて、言わないでよお!」
「すまない……行方不明なメンズLサイズの黒Tシャツ父さん、レディスMサイズの赤Tシャツ母さんに代わって……親代わりとして、なんとかピンTと暮らしてきたけど……もう、お別れだよ……お、俺は、もう……ただの布さ……青色のボロ布なんだよ……もう、Tシャツとしては……死んでいるんだ……」
「いやあ! いやああ! 逝かないで、青兄ぃ! 逝かないでよお! 逝くのなら、ピンTも一緒……一緒だよ! 置いてかないでね、ひとりで逝かないでね、ピンTも一緒だからね! 一緒に逝こうよ! 一緒じゃなきゃ、嫌だよ! 青兄ぃ!」
「ピンT!」
「青兄ぃ!」
「じゃかあああああぁぁぁぁぁしいいいいぃぃぃぃぃ!!!」
グレート・ザ・屍豪鬼はTシャツ兄妹のクライマックスシーンを見せられて、本気でキレた。
「やかましいんじゃい! ボケがああぁぁッ! 何が悲しゅうて、貴様のひとり芝居なんぞを見ねばならんのじゃい!」
怒り心頭なグレート・ザ・屍豪鬼は、ボサメガネ少女に掴みかかった。
“びりぃぃ”
嫌な音がした。グレート・ザ・屍豪鬼が掴んだTシャツは、びぃっと裂けてしまった。
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