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ビッグボスと男の子達は、あまりの大声に、とっさに耳を塞いだ。
「う、うるっせぇ」
耳がキーンとする。瞬時に耳を塞いだ男の子達ではあったが、それでも女の子の大声は、男の子達の鼓膜に衝撃を与えた。
女の子を掴んでいた男の子の手は、今は耳を塞ぐのに使われている。スケッチブックを掴んでいたビッグボスの手も、耳を塞ぐのに使われている。
“バサッ”
スケッチブックは地面に落とされ、砂にまみれる。それを見た女の子は全力で走り出し、スケッチブックを拾い上げようとする。
「させるかぁ!」
ビッグボスは素早く動き、スケッチブックを蹴り上げた。スケッチブックはビッグボスの頭上に飛ばされてしまう。
「いいか、凛香! おまえのせいで、住之江幼稚園が暗くなるんだ! おまえが幼稚園を暗くしてんだ! しめっぽくなって、しんきくさくなるんだ! そのせいで、俺様のところに苦情がきてんだよ! 凛香をどうにかしてくださいってなぁ、たくさんの奴らがなぁ、俺様に言ってくるんだよなぁ!」
ビッグボスは飛び上がり、蹴り上げたスケッチブックをキャッチしようとする。
「なので俺様がおまえに、判決を下す! 凛香! おまえは、大事なスケッチブックを取り上げられるの刑に処すぅ!」
ビッグボスの手がスケッチブックに届く……寸前に、ビッグボスは、背中から誰かに抱きつかれた。
「うあッ! な、なにすんだよ、おまえ!」
ビッグボスの背中には、女の子がぴったりと張り付いている。
「乙女のクソ力ぁぁぁあああッ!」
女の子は歯を食いしばり、宙にいる状態で、身体をブリッジさせる。
「うわわわッ! やめろぉ! やめてろってばぁ!」
うろたえるビッグボスを背中から抱きしめながら、女の子は後方に向かって、背中を思い切り反らした。
「やめろぉ! やめろよおおおぉぉぉ……」
“どずずぅぅうううん”
ビッグボスの後頭部が、地面に打ちつけられた。
女の子は見事すぎるほどに美しい、バックドロップを披露した。
“ずずううん”
ビッグボスの巨体は、地面に力なく沈んだ。
渾身のバックドロップを喰らったビッグボスは、白目を剥き、ぴくりとも動かない。
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