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ある日、学校から帰ってきたチエは、ベッドに横たわっている私の隣に寝ころび、いつものように学校であった出来事を話し出した。
一方的に話しているのではなく、時折語尾にクエスチョンマークをつけて、私の答えを待っているように思えた。
ーーチエと話したい。
強く思った瞬間、私の口は言葉を紡ぎ出した。
「チエ…チャ…ン」
人形は言葉を持たないというごく当たり前の事実が逆転した。
ぎこちない話し方だったし、それ以上は喋れなかったけれど、私は驚き、そして喜んだわ。
これからは彼女と仲良く話せる時が来るかもしれない、と。これは輝かしい未来への第一歩だ。チエもきっと喜んでますます私を大切にしてくれる……。
ところが彼女は驚いたあとに泣きそうな顔になり、しきりに辺りを確認すると、部屋を出ていってしまった。
どうしたのだろう。
その時の私はそう思った。
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