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チエがスキップをしながら部屋に入ってきた。
手には大きな箱が抱えられていて、やけに上機嫌だった。
彼女はそれを床に置くと、鼻歌混じりに包装紙を破り始める。
嫌な予感はした。
彼女は包装紙を取り去って、今にも箱を開けようとしている。
開けるな開けるなと祈ったが、彼女は箱を開いて中のものを取り出してしまった。
衝撃が走った。
中に入っていたのは西洋人形だった。
赤いストレートの髪、白いスカート、金のネックレス、端整な顔立ち、そして希望に満ちた大きな眼……。
悔しいけど、すべてが私より優れているように感じたわ。
私はあの人形に負けた。
私はもう彼女に必要とされていない。
私はもう、捨てられていたんだ。
そう感じた瞬間、抑えきれない思いが爆発し、言葉となって口から放たれた。
「フザケルナ!…ヨクモ…ヨクモワタシヲステテ…クレタナ」
チエはハッとしたようにこちらを振り向き、立ち上がって棚に歩み寄る。そして私を手に取って化け物でも見るかのような目で眺めると、信じられない言葉を放った。
「もう、一体何なの……。気持ち悪い」
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