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このボタンを押すことで何が起こるかはわからない。良い方に転がるかもしれないし、悪い方に転がるかもしれない。
けれども、押さずにいたら、今のこの状況はずっと変わらない気がした。
ボタンに触れ、圧力をかけ、手を離し、一秒、十秒、二十秒……。
「何も起きねえじゃねぇか」
ユウキはそう呟いて軽くドアを殴った。
押せばドアが開いて外に出られるという期待を抱いていた俺は肩を落とした。
また再び事が起こるのを待つしかないのか。あるいは何も起きずにここで飢え死にをするのか……。
「……何か聞こえないか?」
沈黙を破ったのはカズキだった。
俺たちは耳を澄ませる。
遠くの方から轟音が聞こえた。獣が威嚇するときに発するような嫌な音だった。
徐々にその音は近づいてくる。明らかに何かがこちらに向かって迫ってきていた。
だんだん部屋が振動し始める。
まずいと思ったが、何もないこの部屋では逃げようがなかった。
ボタンが赤く点灯するのが見えた。
と同時に、床が爆発した。
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