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「部長、スピーチの間中、ずっと鳥子(とりこ)の方見てたねー」
真ん中にキャンドルと薔薇の花が飾られた、白いクロスの掛かった丸いテーブルの隣に座るエリカが笑いながら言う。
「まあね。あの人、こういう席苦手だもん。なのになんで舞は部長にスピーチ頼むかなあ。空気読めっての」
「あはは。舞にそれ期待しちゃだめでしょー」
「それよかワイン貰わない?今のうちにたっぷり食べて飲んどかなきゃ。あたし、次、歌わなきゃなんないのよ」
「うへー、鳥子に結婚式の余興頼むって、舞はどういう神経してんだろ」
「なんも考えてないんでしょ」
赤い薔薇に飾られたひな壇に並ぶ新郎新婦をちらりと眺めて、あたしはウエイターに手を挙げた。
「エリカも白でいい?」
「いいよ」
ウエイターに白ワインを頼んで注いでもらう。
「元彼と後輩のできちゃった婚に乾杯」
エリカが言った。
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