23週目

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「あたし、伊勢志摩って初めて。ほら、日本人なら一生に一度はお伊勢参りって言うじゃない?これであたしもお伊勢参りを果たせるって思うとかなり楽しみなのよね」 北海道民にとって、京都や奈良などの歴史ある街っていうのはどこか憧れがある。なにしろ何百年も前に建てられた建造物とか、そういった歴史的なものは北海道にはあまりない。 だから日本の代表的な神社である伊勢神宮も、あたしにとってはかなり興味深いものなのだ。 「関西の人間なら小学校の修学旅行でお伊勢参りを済ますってのが多いかもね」 「えっ、小学校の修学旅行でお伊勢参りするの!?すごい。シブい。あたしなんて小学校の修学旅行は洞爺湖だったったのに。新も修学旅行でお伊勢参り行ったの?」 「俺の通ってた小学校の修学旅行は広島だったんだよね。だから実は俺も伊勢って行ったことない。お伊勢参りも初めて」 へえ。大阪から特急列車で2時間ちょっとの距離なのに。近場だと意外と行かないものなのか。 「そっかあ、お互い初めてのお伊勢参りだね。しかも今回、新婚旅行ってことでデラックスカー利用だし、泊まる所も奮発したし。二泊三日だからゆっくりできるし、楽しみだね」 そう、なんと言っても今回は新婚旅行。伊勢志摩の美味しい海の幸も楽しもうと、ホテルのレストランも予約済みだし。 一泊目は憧れのクラシックホテル、二泊目は系列の全室スイートオーシャンビューのホテルに部屋を取っているのだ。 「それにしてもまだ3月初めとはいえ、決算月によく休めたね」 隣に座る新の肩に、ちょっと頭を預けてみる。 「1日だけだし。それに、元受付の加藤さんとの新婚旅行のための有給申請なんだから、受理されない訳ないだろ」 そう言って新が笑ったから、少し肩が揺れた。
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