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方々で聞こえる野鳥の鳴き声といい、不気味な街道だ。いくら進んでみても人とすれ違うどころか人の気配すら感じない。それ以前に、ここがどこなのかわからない。
すると背後から、ガタガタとけたたましい音が近づいてきた。振り返ると、街道の真ん中をもの凄い勢いで走る馬車が目前に迫ってきている。避けなければ間違いなく牽かれる。
「逃げて!!」
一瞬、視界に馬車を操る女性の姿が見え、その叫びにも似た声を聞き、すぐさま街道の両脇に生い茂る木々の中へと背面から飛び込んだ。新緑の香りが漂う中、すぐさま態勢を立て直して街道を猛スピードで駆け抜ける馬車の後姿を見た。
「逃げて・・・って!?」
魔物の群れが、女性の操る馬車を追っている。狼に似た凶暴な魔物が三体。その魔物の背には、短剣を持つゴブリンが騎乗していた。ゴブリンなんて、決して知能が高い魔物ではないのに――という知識は、覚えているようだ。
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