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駆け抜ける馬車とそれを追う魔物たちの姿が視界から消えてしばらくした後、馬の悲鳴と同時に馬車が横転する音がはっきりと聞こえた。馬車が倒れたとなれば、馬を操っていた女性は魔物に殺されるだろう。中身のない鞘だけを持って横転した馬車の元へ駆けつけたところで、馬車を追っていた魔物を倒すのは難しい。馬車の元へ行くのは、自殺行為だ。馬車が魔物から逃げてきた方向へ向かえば恐らく安全だろう。
しかし考えとは裏腹に、自ずと脚が馬車の元へと動く。馬車の方角へ走り出していた。一直線の街道は迷うことなく、しばらく走り続けると、横転して壊れた馬車が見えてきた。
右側の車輪から倒れた馬車。馬は未だ繋がれ無傷だが、動くことができずに嘶きをあげもがいていた。左の車輪がカラカラと空を駆け、すぐ傍に男性が血を流しながら倒れていた。
「大丈夫ですか!!」
目の前の緊急事態に声をあげ、男性の元へ駆け寄った。
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