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うつ伏せに力なく倒れる男性を起こすが、血生臭さがツンと鼻を刺激した。生暖かく、べっとりとした血が掌に付く。もう手遅れだった。抱き起した男性の胸には刃による傷が何ヵ所もあり、そのうちの数ヵ所が急所を抉っていたのだ。目を見開き絶命した男性の瞼をそっと伏せる。
あの女性はどこへ行ったのだろう? 周りを見回しても、馬を駆っていた女性の姿が見当たらない。街道の右側に広がる木々の茂みへ入り周囲を探すと、馬を駆っていた女性の姿がそこにあった。
崖を背に逃げ場を失い、六匹の魔物が今にもドレスを着た女性に襲い掛かろうと周りを取り囲んでいる。
「はぁ・・・はぁ・・・く・・・うっ・・・!!」
女性、いいや、彼女はまだ少女だ。年も見た感じおれと同じくらい・・・・・・だろう。ショートソードを中段に構えなおしたが、相当息を切らしている。魔物を六匹相手にするのは厳しそうだ。多勢に無勢。おれにも武器があれば――
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