第一章 失われた過去

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 突き刺した剣を引き抜くと、返り血が噴出した。さっき嗅いだ人の血よりも、魔物の血の匂いのほうが強烈だ。むせ返るほどに臭い。崖に背を預ける少女のもとへ一度後退し、残る三匹の狼の魔物に剣先を向ける。  剣の柄を両手でしっかりと持ち、取り囲む魔物たちを睨み付けた。その瞬間、一匹の魔物が我を忘れて飛び掛ってきた。  右足を一歩前へ踏み込むと同時に、剣を勢い良く振り下ろす。ゴリッと骨を断つ感触が手に伝わる。狙い通り、魔物の首を断ち切ることができた。  刀身に付着した血を払い、再び魔物へと剣先を向ける。あと二匹。深く息を吸いゆっくりと吐き出す。大丈夫だ、おれはまだ戦える。魔物たちは、なかなか仕掛けてくる気配を見せない。 「うぉぉぉぉぉぉ!!」  おれは咆哮をあげた。それに驚いたのか、魔物は脱兎の如く茂みへと走り去っていってしまった。おれの勝ちだ。なんとか魔物を退けることができたんだ。
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