傍観者

3/20
前へ
/77ページ
次へ
とある都市の外れに、年季の入ったビルがそびえていた。 それは、旧ホテルであったが、 今は黒いスーツを着用した物騒な連中が頻繁に出入りしている。 どうやら、どこかの組織がアジトに利用しているようだ。 そのアジトの門番に任命された若い黒服が二人。 その二人の視界に唐突に五つの人影が現れた。 「なんだ、お前ら…学生か?」 「此処は関係者以外立ち入り禁止だ」 一人の黒服が問いかける。 続くように、もう一人の黒服が言った。 すると五人の内、男一人が無言で黒服達へ歩みを進めた。 男の容姿は、二十代前半、黒い髪と赤の混じった褐色の瞳。 胸元には、金属製の十字のネックレス。 黒服が学生かと問いかけたのは、男の後ろの四人の内に少年少女が含まれているからであろう。 高校生と見られる二人の男女。 白衣を着用し、眼鏡を掛けた知的な二十代の男。 そして、高校生であろう女が押している車椅子に座った、小学生位の小さな少女。 五人の中でも、その少女が一際目立っている。 黒をベースにしたゴシックロリータな服装に、フワフワとした金髪。 さらに、異質を感じさせる両目に巻かれた包帯。 さも、人形のような少女だ。 黒服達は、この五人に何故か恐怖を覚えた。 そう思っている間にも、十字のネックレスの男は、黒服との距離を詰めて行く 距離が五メートルほどになると、男は歩みを止めた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加