傍観者

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男が足を止めたと同時に、不審に思った黒服達が男へ拳銃を構える。 「貴様ら…何者なんだ…… それ以上動くな。動いたら撃つ」 黒服の言葉に臆することなく 男は良い放つ。 「俺の名前は椎堂和也だ。 自分を殺めた人間の名位は覚えておけ」 「貴様何を言って……」 瞬間、口を開いた黒服が派手に吐血した。 顔を地面に向けているが、目、鼻、口、耳の全てから止めどなく血を流し続けて、苦しそうに もがき苦しんでいるのが分かる。 隣で流血している同僚の姿を目撃し、黒服が慌てたように椎堂に向けて銃の引き金を引く。 パァン 渇いた音を響かせて、銃口を飛び出した弾丸は椎堂に向かって一直線に飛んでゆく。 だが、その弾丸は椎堂の左胸の手前で停止し、紫色の炎に包まれて灰となる。 「の、能力者…!?」 驚く黒服の目を睨み付け、椎堂は呟いた。 「能力を知ってるのか…」 一度溜めて、冷たく言い放つ。 「俺の能力は《死》。 気付いたのが遅かったな。残念だ」 黒服の目を睨み付けていた椎堂の瞳が、赤の混じった褐色から真紅へと変化する。 真紅の瞳と目を合わせてしまった黒服は、 隣の亡き同僚のように吐血し、数秒後には完全に動きを停止しさせる。 寂れたビルの扉の前には屍が二つと、それから流れ出た血液で作られた、赤い水溜まり。
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