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予言者は静かにペンを置いた。
彼は迷っていた。
書くべきか、書かざるべきか。
この世が滅ぶという事は、もう動かしようのない未来の事実である。
彼はこれまで幾多の未来の事象を記してきた。
しかし、この人類全てに対して起こる戦慄を皆の目に晒すと言うのは趣味のいい事であろうか。
これを後世に残すという事は、最終期の人類全てに、あなたはいつ死ぬと言う事を言うのと同じである。
自分の期限を知り、不安におののいて日々を暮らさすより、その時急に死んでしまう方が彼等の為であろう。
だが、この未来の人類たちは教えさえすれば何とか切り抜けると言う事もあるのではないか。
もちろん彼の目にはその光景がはっきりと見えている。
しかし、この世には「もしも」と言う言葉があるではないか。
彼はふと思いついて、目をつぶった。
よし、今度はもう一度、その五年前の世界をじっくりと見てみよう。
そうすれば何か答えが出るかもしれない。
彼は凝視し、眺め回し、覗いた。
!!
こいつらは何だ!
決心した。彼はペンを取ると、それを短い文にしたためた。
この俗物たちは知らせるに値する奴等である。
これを読んでみて少しは悩んでみるがいい。
でも、どうせ読んでも読まなくても同じ様な事だろうがな。
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