1,3黒木誠

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僕は幼い頃から絵が好きだった。 描くのも当然好きだが、絵画を鑑賞することが最も好きだった。 一番好きな絵はベラスケス作の『道化師パブロ・デ・バリヤドリード』。 黒と灰色の暗色系を基調としているのに、描かれている道化師は軽やかで生き生きとしている。 バロック主義。光りと影による劇的な効果が、仰々しくも壮大な構図が、信仰に対する好奇心を過剰に刺激する。 新古典主義やヴィクトリア朝、禁欲的で厳粛な抑圧への背信と解放。 僕はこの時代の絵画が好きだった。 彼らバロックの画家に憧れて、僕は絵を描きはじめた。 一度だけ、中学生が描いた絵を出す市のコンクールで優秀賞をとったことがある。 最優秀賞は逃したけれど、今でもそれは僕の誇りだ。
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