1,3黒木誠

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「黒木くん、カンバス運ぶの手伝ってくれないかな?」 「あ、はい」 朋先輩に呼ばれて顔を上げる。 机の上には描きかけの下書きがたくさん。 どれも僕の描きたいものを表現できていない。 「はやくはやくー」 「はい」 急いで立ち上がり、先輩についていく。 「黒木くん、調子はどう?」 朋先輩は僕を見て言った。僕も先輩を見ようとすると、身長の差のせいで見下ろすかたちになってしまう。 「あんまりです。描きたいものが、描けません」 スランプ、というやつかもしれない。 高校に入ってからというもの、曖昧なアイデアしか出てこない。 「そっか。コンクールに間に合うといいね」 「……はい」 市が主催の春のコンクールが来月の末にある。 締め切りは遅くても来月の頭まで。 もう2ヶ月もないのに構想もまとまっていない。
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