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楠木先輩のことは頭の隅に置いて、カンバスの方に集中する。
「……黒木くんはまだ分からないと思うけど、」
朋先輩に話し掛けられ、注意力が散ってしまった。
「なんですか?」
「楠木くん、けっこういいやつだよ。見た目と違って」
そう言った朋先輩の顔は、笑っていた。
「そうですか?」
僕にはどうしても彼を認めることが出来ない。
「僕にはどうしても、そんな風には思えません」
不真面目な彼の姿勢には好意を持てないし、人の話をちゃんと聞かないという点も、僕には理解しがたい。
真面目にやっている僕や朋先輩のことを、彼はきっと笑っているに違いない。
そう思うと、やるせない気持ちになる。
僕が彼を好きになれないのは、彼の絵が上手だということも多分にある。
中学生の市のコンクール、そこで僕が優秀賞をとった時、
彼は最優秀賞に選ばれていた。
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