1,3黒木誠

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楠木先輩のことは頭の隅に置いて、カンバスの方に集中する。 「……黒木くんはまだ分からないと思うけど、」 朋先輩に話し掛けられ、注意力が散ってしまった。 「なんですか?」 「楠木くん、けっこういいやつだよ。見た目と違って」 そう言った朋先輩の顔は、笑っていた。 「そうですか?」 僕にはどうしても彼を認めることが出来ない。 「僕にはどうしても、そんな風には思えません」 不真面目な彼の姿勢には好意を持てないし、人の話をちゃんと聞かないという点も、僕には理解しがたい。 真面目にやっている僕や朋先輩のことを、彼はきっと笑っているに違いない。 そう思うと、やるせない気持ちになる。 僕が彼を好きになれないのは、彼の絵が上手だということも多分にある。 中学生の市のコンクール、そこで僕が優秀賞をとった時、 彼は最優秀賞に選ばれていた。
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