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「今日はもういいのか?」
部室の扉を開けると、朋の他に二人が椅子に座っていた。
朋のキャンバスを後ろから覗くと、天使の肖像のようなものが描かれていた。
「うん。鍵は楠木くんに渡したから」
俺は座っている二人に目を向けた。
一人は生意気な一年で、もう一人は和弘。
一年坊は気になっているようで横目でちらちらと俺のことを見てきたが、和弘は黙って机の上に置いてある彫刻の数々を見つめていた。
「じゃあね。楠木くん、黒木くん」
「おー、気いつけて帰れよ」
気の抜けるような声で和弘が言った。
あいつは一度も彫刻から目を離さなかった。
こういう好きなものに没頭できるところは、正直に尊敬できるんだけどな。
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