1,4堂島裕紀

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「和弘、次は彫刻でもするのか?」 朋が小さな声で言う。 「違うと思う。彫刻は面倒だって、楠木くん言ってたから」 あいつらしい理由だ。 手間を憎み忙しきを嫌う。 ようはただの面倒くさがりなのだが。 「彫刻かなり見てたよな」 「凄いんだよ。あの中に、割れたコンクリートとかあるんだから」 「あの倉庫、そんなのまで置いてんの」 美術室の倉庫の話は聞いてたことがあるが、コンクリートまで入れていたら節操がなさすぎだろ。 「さすがに、そこまではないよ。拾ってきたって。四十センチくらいの」 拾ってきたって、犬かあいつは。 「楠木くんって、ホントによく分からないよね」 「ああ。ただボサッとしてるだけにしか見えねえのにな」 俺と朋の会話はあまり続かないのに、あいつのこととなると案外続く。 「不思議ちゃん、みたいな」 朋の言葉に俺は笑う。 「あいつにちゃんはないだろ」
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