2,片倉愛子

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「見て」 判定のところを指差して秋穂に見せる。 「うわぁ……、Dですか」 なんと形容したらいいのかが分からない、慰めようとしているような、気を遣おうとしているような、この時の秋穂の表情を私は忘れない。 「……うん」 その顔に、優しさに傷ついたのだから。 高二、春ももうすぐ終わる頃。 私は初めてDを取りました。 「まあそんなに落ち込みなさんなって」 肩を優しく叩かれるけど逆効果。 私の傷口には塩がすりこまれていく。 いっそのこと、笑ってくれればよかったのに。 そんなに傷つかないで済んだから。 現実逃避がしやすいから。 秋穂に求めていた反応がよく分からなくなった。 最初は笑われるのが嫌だったのに、今では笑われた方がよかった。 「はあ」 秋穂に聞こえないように、小さな声で濃厚なため息をついた。
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