2,片倉愛子

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放課後、重たい足取りで歩いていると、のろまな一台の自転車とすれ違った。 「え、あれ」 いや、見間違いでしょ。もう授業終わってるし。 振り向くと、その自転車は学校の前の横断歩道で止まっていた。 乗っている人の顔をじっと見る。自転車のカゴを確認する。 中にはたくさんの画材。 「はあ」 思わずため息。 「和弘っ!」 私は大声であいつの名前を呼んだ。 「おー、愛子」 和弘が私を見た。私はカバンを抱えたまま走りあいつに近づく。 「何で走ってん、いった!」 そしてカバンを和弘の頭に振り下ろす。鈍い音がした。 「学校休んだの?」 興奮が冷めないままだったので、詰問のような口調になった。 「いや、ちょっと、その前に暴力の説明を……」 信号が青になる。
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