2,片倉愛子

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仕方なく駐輪場に自転車を置かせてもう一度尋ねる。 「なんで休んだの」 駐輪場まで歩いている間に冷静になると、カバンは少しやりすぎたかもしれない、と後悔した。 「学校にはちゃんといたって」 「うそ。目が泳いでる」 「いやー」 和弘はこめかみを指でかいた。 こいつの癖だ。何かを隠している時の。 「言いたくないこと?」 「ああ、まあ」 「絶対?」 いつもボーッとしている和弘が、珍しい言葉を使った。 「まあ、絶対、だと思う」 声音も心なしか、真面目だった気がする。 「そっか、じゃあ……行ってもいいよ」 「お前、どんな立場だよ」 和弘はカゴから画材の入ったビニール袋を取り出した。 たくさんの画材を持って歩いていく背中。 優柔不断な和弘の使った絶対。 何を隠しているのか、何で隠しているのか。 私には分からない。 胸のどこかがもやもやした。
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