2,片倉愛子

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「えー、劣性の遺伝子iを致死遺伝子とし……」 生物の授業。講師のダラダラとした話を聞いている生徒はほとんどいない。 変わりにカチカチとシャープペンシルが鳴っている。 私の机の上では英単語が隙間無く書き連ねられているノートが広がっている。 覚えたつもりの英単語を見て、少しだけ悲しくなった。 まだ二年の一学期なのに、こんなにも勉強をしていて何になるんだろう。 斜め前の席の秋穂を見ると、思った通りに机の下で携帯電話を扱っていた。 気になって周りを見ると、後ろのほうの席では漫画を読んでいる人もいた。 今年の春から特別進学クラスに入ったからといって、勉強をしていない人だっている。 私は自分の目指す大学に入りたいから、今のままでは受かれないから、仕方なく勉強をしている。 不安だからする私と、不安ではないからしない彼ら。 どっちが正しいのだろう。 私は、自分が正しいと思っている。 でも不安は消えてはくれない。 勉強をすればするほど、その底の見えなさに不安になっていった。
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