1,1片倉愛子

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「楠木、また授業出てないみたいだよー」 秋穂の言葉に、私は読んでいた参考書を閉じた。 「もう、なんであいつはああなんだろ」 思わずため息がもれる。 楠木和弘、何かと問題児な私の友達だ。 いつもぼーっとしてて何を考えているのかが分からないやつで、よく授業をサボり屋上で眠っていたり、仲のいい男子たちとだべったりで、美術の時間だけは勤勉な男。 和弘がサボったという話は、何故か教室が三つほど離れている私のクラスまで届く。 あれはそれほどの人気者なのだろうか。 少しだけ考えてすぐにその考えを取り消す。 それはないか。 和弘、あんなだし。 「駄目なダンナを持つと苦労しますねぇ」 茶化すように言う秋穂。私はすぐに否定する。 「ないない。だって和弘、あんなだもん」 「あんなって、それはちょっと楠木可哀そうじゃない?」
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