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「・・・んんっ・・・これ聞いたら起きなきゃ・・・・ね」
いつも歩く道はもう真っ暗で
見えるのはコンビニのあかりくらい
通り沿いの家からは夕御飯のにおい
お散歩に出掛けたイヌ
すこし遠くでネコの鳴き声
いつもの交差点
あとすこし
お財布の中は50円くらい・・・だから
二件目のコンビニや寄り道はやめよう
ぼんやり眺めている景色は
なにも変わらなくて安心して
細い路地に入っていくと
“あの日”の歌が聞こえるようで
ふとくちずさんだ
けれど“あの日”は二度と
還ってはこないだろう
それは根拠のない確信
幾重にも重なる時間の層が
わたし達を隔てたのだから・・・
いつもの帰り道
すこし淋しげな帰り道
いつもの帰り道
すこし哀しげな帰り道
(あ。もう7時だわ・・・・)
ヒナは一曲を聞き終わると、いつも通り、いや、機械的な作業でパジャマを脱ぎ捨て制服を身に纏う。
(やっと昨日の緊張から解放された気分だわ)
緊張していない、と放った言葉とは裏腹に、実際のヒナは極度に緊張しており、制服のボタンさえ掛け違えたり、コンタクトレンズさえ忘れるところであった。
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