エピローグ、または、プロローグ

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「アリカッ、もう時間がないんでしょッ? しっかり掴まっててッ、もうちょっと加速するよッ!」  ギシリ、少女の小さな身体が軋む。 「……ッ」思わず苦痛に表情が歪む。  風の壁が少女と少年の行く手を阻もうとするのにも関わらず、少女はひたすら真っ直ぐに向かう。  しかし、それでも、空を滑るように移動する黒衣の女の姿には追いつくことが出来ず、少しでも目線を外してしまえば、高層ビルの群れに紛れて消えてしまいそうだった。 「いや、無理しなくてもいいよ、サオ。……もう大丈夫だ、オレ一人で十分だ」  それは、自分自身に言い聞かせるような、まるで、独白。  小さな、しかし、強い意志を持った言葉。  それは、乱暴に吹き荒れる風に掻き消されることなく少女の耳に届く。    「――【世界影】に触れて、そして、サオに出逢えて、オレは自分のやるべきことが分かったんだ。  それは、未来をねじ曲げることなんかじゃなくて、過去を引きずることなんかじゃなくて、今を生きる、ってことなんだ。  オレは、それをスプリングフィールにも伝えたいんだ――」 .
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