2章1節 自殺少年

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 昼間ともなると、さすがに平日の街にいる人はまばらだった。  だから、夏の暑さから、そして、自己嫌悪から逃げ出すように、早足で歩くオレは、あっという間に、いや、奇跡的に駅までたどり着き、何の迷いもなく帰路に着く。  暑さにやられて食欲はさっぱりない。  夏服のワイシャツが汗で張り付いて気持ち悪い。  地下鉄に揺られている間、オレは全力で両親と学校への言い訳を考えていた。  誰もが納得のいく、オレに少しの非もない、そんな、都合のイイ言い訳を。  オレが電車に揺られながら、そんなことを考えている間、双子の電子音が、とある一国の王女の物語を壮大に歌っていたのには、さすがにげんなりした。  ……まあ、その双子のおかげ……かは分からないけど、オレの渾身の言い訳は、全く非の打ち所のない卑屈な成功を収めたのだけれども。         ――tomorrow never die――
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