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そうか10日も経っていたのか。
食事の内容を見てみると何度か何となく見覚えのある物があった。ただそれが好きなのかと聞かれるとそうでもない。
恐らく運ばれる食事の内からぽつぽつと手をつけた事がある物だったのだろう。そしてそれを私が好きな物であると判断し作らせたのだろう。
「お願いです、姉様……」
そう言う妹の声は震えだしているようにも聞こえた。
だが、どうしても目の前に置かれた料理の数々に一向に興味も食欲も湧かない。私の視線は目の前の妹を通り過ぎその後ろにある太い扉へと向かう。
食事を持ってきた時に開かれた扉は再び閉じられてしまった。しかし妹が持ってきた灯もあってその姿をぼんやりと認めることが出来る。
幼い頃は扉の向こうへ行こうと幾らか考えた事もあった。
外の世界は一体どういった物なのかと思いを馳せ、食事や風呂を見てくれる世話役聞いたりもした。
部屋の外へどうにか出ようとした事もある。もちろん叶わなかった訳だが。
いつからだったか忘れてしまったがいつもの世話役の者が妹へと変わっていた。
「私はこれらの食事が好きなのか?」
「えぇ、姉様。どちらの食事も一級品を使って作らせております」
「……そうか、では柚生(ユズキ)」
そう言って私は妹、柚生へと食事を押し当てる。
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